勃起障害は男性にとって非常に深刻な悩み。男のプライドがありますから、性行為の場面で恥をかくなんて考えられませんよね。勃起障害にはあの有名なバイアグラが本当に効くのでしょうか。治療薬について見ていきましょう。

前立腺がん手術後に勃起できなくなることがある?

疑問を持つ男性

前立腺は男性の膀胱直下にあるくるみ大の臓器です。
前立腺がんの根治的治療は手術と放射線治療ですが、いずれも合併症を伴うことがあります。

前立腺がんの手術では前立腺全摘出が標準術式です。
前立腺による尿道の圧がかからなくなるため、頻尿や尿失禁が起こりやすくなります。
また男性にとって非常に深刻な問題は、勃起障害が起こる可能性があることです。

前立腺周囲には勃起に関わる神経が存在し、前立腺を取り巻くようにネットワークを形成しています。
この神経にダメージを受けないように前立腺を摘出するのは非常に難しいとされてきました。
元来の開腹手術、内視鏡手術等でも神経温存手術が考案されてきましたが、前立腺周囲の神経解剖が詳細には明らかでなかったこともあり、何らかの形で勃起不全を残すこととなってきました。
また手術では精嚢も共に摘出する為、射精が起こらなくなります。

手術と共に放射線治療も進化を進め、強度変調による精密照射を用いてくるみ大の前立腺組織以外にほとんど放射線が照射されないように調整することが可能になりました。
その結果、頻尿、尿失禁のような合併症は軽度になりました。
神経は比較的放射線に強いですが、勃起に関わる血管がダメージを受ける可能性があり、やはりある程度の勃起不全の起こるリスクが残ります。
なお放射線治療では精嚢を摘出しない為、射精は可能です。
手術や放射線治療の前後にはホルモン治療も行うことが多く、これにより前立腺がんの治療成績が飛躍的に向上していますがこれも勃起不全や性欲減退の一因となります。

勃起不全に対しては、術後早期からリハビリを始め、勃起治療薬を用いることである程度の改善が見込めますが、やはり神経をどこまで温存できているかが勃起不全の予後に大きく関わることが分かっています。
しかし、開腹手術や内視鏡でのアプローチ等では十分な視野が確保できなかったり、前立腺へのアプローチ方法に制限がある等の問題があり、元の勃起機能の半分程度までが限界とされていました。

ダヴィンチを使った手術なら勃起不全を回避できる

近年ダヴィンチという手術支援ロボットを用いた手術例が増加していますが、前立腺がんに対しては2012年4月より日本の健康保険適応となっており、ダヴィンチ使用例が飛躍的に増加してきました。

ダヴィンチでは体内の様子が鮮明な3D画像で得られ、しかも内視鏡手術よりも深く細かいところまで見ることができます。
また手術用の鉗子は人間の手の可動域を超えて操作できる為、従来行われてきた術式では不可能な手術操作が可能になりました。
これにより、前立腺の摘出をより精密に行うことが可能になりました。
また、より多くの勃起に関わる神経を温存することができるようになり、元の勃起機能の8割程度以上にまで改善することも可能になりました。

ダヴィンチのカメラを用いて詳細に観察することで、くるみ大の小さな前立腺周囲の神経の分布がより詳細に分かってきました。
ダヴィンチ以前の術式で勃起に関わる神経を温存する場合、前立腺後外側に存在する神経血管束を温存すればよいとされてきました。
しかしダヴィンチを用いた手術が行われるようになって、勃起に関わる神経は前立腺の腹側、背側に幅広くプレート状に分布していることが分かってきています。
また前立腺を覆う被膜についてもより詳細に観察されました。

ダヴィンチを用いるようになり、前立腺がん手術に必要な外科的解剖の知識は飛躍的に向上し、その結果より多くの勃起に関わる神経や血管を温存することが可能になりました。
今や前立腺がんの手術の分野で、ダヴィンチは欠かせないものの1つとなっています。
ダヴィンチのアームでは人間の手には不可能な動きができる為、今後さらに勃起不全を回避できる術式が開発される可能性があります。